東京都庭園美術館「ルーシー・リー展」鑑賞レポート:優雅なアール・デコ空間でうつわに出会う

こんにちは!
ご縁座スタッフです。
今回は、先日訪れた陶芸家「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」の鑑賞レポートをお届けします。

この展覧会は、日時指定というちょっと面倒な予約制にもかかわらず、連日大盛況とのこと。
うつわ好きには外せないと思い、少し涼しくなったタイミングで行ってきました。

実際に足を運んでみると、うつわ好きはもちろんのこと、アートやモノづくり、建築などに関心のある方にも良さそうな内容でした。
撮影した写真とともに、この展覧会の魅力をお伝えします。

目次

東京で久々の「ルーシー・リー」を鑑賞・シンプルに美しいうつわに見とれる

私がこの展覧会に足を運んだのは、2010年に新国立美術館で「ルーシー・リー展」を鑑賞、その時の感激が忘れられず、東京での開催を知ってからは絶対に行こうと決めていました。
もう1つの理由は、会場が東京都庭園美術館であること。
凝った装飾の内装に、シンプルモダンな陶芸作品がどのように展示されるのかがとても楽しみだったのです。

「陶芸展」や「焼き物の美術展」と聞くと、どこか堅苦しいイメージを抱いてしまう方もいるかもしれません。
しかし、いざ足を運んでみると、難しい知識は一切不要の見ごたえ抜群のラインナップでした。

色や造形がシンプルに美しいうつわの数々は、SNS的にも「映える」ものばかり。
(この表現が最適とは思っていませんが…)
幅広い世代の方が、長時間作品の前に立って熱心に眺めている姿は、この展覧会ならではの反応のように感じました。

【展覧会概要】

展覧会名: 「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」
会期: 2026年7月4日(土)~ 9月13日(日)
会場: 東京都庭園美術館(本館+新館)(東京都港区白金台5-21-9)
開館時間: 10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日: 毎週月曜日(ただし7月20日は開館、7月21日は休館)
観覧料: 一般 1,400円 / 大学生 1,120円 / 高校生・65歳以上 700円 / 中学生以下無料
チケット: 日時指定予約制(オンラインでの事前購入がおすすめ)

アール・デコ様式の空間とモダンアートの融合:東京都庭園美術館だからこその見ごたえ

まず心を奪われるのが、展覧会の会場そのものが持つ特別な空気感です。
会場となっている東京都庭園美術館の本館は、1933年に建てられた「旧朝香宮邸」。
ここはフランスを中心に1920〜30年代に大流行した「アール・デコ様式」の粋を集めた、まるでヨーロッパのおとぎ話に出てくるような歴史ある邸宅なのです。

一歩足を踏み入れると、幾何学模様が美しい床や、優美なガラスのレリーフ扉、そしてアール・デコ調の独創的な照明など、趣向が凝らされた装飾の数々に圧倒されます。

ふだんよく見かける「白やコンクリートの壁の美術館」とはまったく違い、かつて誰かが大切に暮らしていた生活の気配と、贅沢な職人技の痕跡が今なお息づいているとても贅沢な空間で、建物だけでも十分見ごたえがあります。

「こんなに個性的なお部屋の中に、現代的な焼き物を並べたら、お互いがケンカしてしまうのでは?」
最初はそんな小さな不安もありましたが、実際に展示室を巡ってみると、ルーシー・リーのモダンな陶芸作品が違和感なく溶け込んでおり、普通に鑑賞している自分に気づきました。

館内の優美な内装やアンティークな空気感に、無駄のないシェイプの作品が、なぜか驚くほどしっくりとなじむのです。
おそらく、リーの作品が持つ色使いがどこまでもエレガントで、かつていねいな手仕事のぬくもりが、職人技を駆使した建築とマッチするからではと感じました。
建築の重厚さと、うつわが持つ「薄手で軽やかでありながら、芯の通った強さ」が互いを引き立て合い、部屋全体がひとつのアート空間として息づいていました。

ガラスケース越しに出合う、独特の釉薬と造形美に魅せられる

各展示室では、ガラスケース越しにルーシー・リーの作品を間近でじっくりと見つめることができるのが最大の見どころであす。
この時間が本当に贅沢で、 写真や本で見るのと、実物を目の前にするのとでは、受ける感動が全く違います。
ルーシー・リーの代名詞ともいえる、轆轤(ろくろ)の技術から生み出されたシェイプの美しさは、ため息が出るほど繊細。
無駄な飾りが一切削ぎ落とされているのに、冷たい印象はまったくなく、どこかあたたかみがあり、さまざまな角度からずっと眺めていたくなります。

さらに、リーの特徴である「象嵌(ぞうがん)」や「掻き落とし」といった繊細な技法で、素地に細かい模様や線が刻まれている様子もはっきり見ることができます。
そして特筆すべきが、彼女のこだわりが詰まった「釉薬(うわぐすり)」の美しさです。
優しいピンクや深く吸い込まれそうなブルー、あるいは溶岩のようにざらりとした独特の質感は、あるようでない彼女ならではの色使いです。

また、光の当たり方によって表情がふわりと変化する姿は、工業製品とも、昔ながらの重たい和食器とも違う、唯一無二の作風といえます。
都会的な洗練と、土の温もりが奇跡のようなバランスで同居しており、うつわに詳しくなくても、シンプルに美しく「欲しい、使ってみたい」と思わせる魅力があります。

東洋とヨーロッパの陶磁器の歴史も学べる!盛りだくさんの展示内容

バーナード・リーチ タコの柄のスリップウェア

今回の展覧会のサブタイトルは「東西をつなぐ優美のうつわ」。
会場を巡っていると、知識が線と線でつながり、自然に歴史も学べてしまっていることに気づきます。

各展示室には、ルーシー・リーの作品だけでなく、彼女に影響を与えた作り手のうつわも数多く展示。
例えば、彼女が尊敬していたバーナード・リーチのスリップウェア。また、リーチと交流があり日本の民芸運動を担っていた、濱田庄司の作品などが展示され、彼女がヨーロッパだけでなく東洋の陶磁器にも造詣があったことが分かります。
その証拠に、中国の宋時代の陶磁器をモチーフにした花器をいくつも作っています。

また、バウハウスやアーツ・アンド・クラフツ運動など、ヨーロッパでのモノづくりの動きを知ることができる解説文や展示もあり、美しい陶芸作品を見ながら、気軽に歴史をおさらいできてしまうのがこの展覧会の素晴らしいところ。

「うつわ」を通して、日本と海外の文化がこんな風につながっていたんだなと知ることで、難しい歴史の勉強というよりは、「へぇ〜、そんな物語があったんだ!」と楽しく、そして深く学びを得ることができました。

鑑賞後はお気に入りのうつわが欲しくなってしまう、魅力あふれる展覧会でした

鑑賞後は、すっかりルーシー・リーの生み出す色彩と造形の世界に魅せられ、「うちのあの棚に、あんな青い小鉢を置いたら素敵だろうな……」なんて、帰り道はすっかりうつわ熱に火がついてしまいました。

2010年の感動を再び味わいたいと足を運んだ今回の展覧会ですが、旧朝香宮邸という最高のロケーションも相まって、期待をはるかに超える素晴らしい展覧会でした。
うつわ好きはもちろん、空間デザインや建築、モノづくりが好きな方なら、間違いなく心ときめく時間が過ごせるはずです。

東京での開催は、9月13日までであとわずかです。
ただし、9月26日からは三重県立美術館、12月26日からは大阪のあべのハルカスで開催されます。
気になる方、ご近所の方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。

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