一杯のお茶が伝える日本文化|日本茶の種類と製法、飲み方などを詳しく解説
日々、食事やリラックスタイムで当たり前のように飲んでいる日本茶。
しかし、「日本茶」とひとくちに言っても、その種類や製法については以外と知らない方もいるのではないでしょうか。

今回は、日本茶の種類、製法のほか、美味しい入れ方や茶器の選び方など、日本茶にまつわることを詳しく解説していきます。
この記事を参考に、日本茶について深く知りたい、きちんと淹れて日々の暮らしを楽しみたいと思っていただければ嬉しいです。
緑茶の特徴と種類
日本茶の最大の特徴は、酵素の働きを利用しない「不発酵茶」であること。
摘み取った茶葉をすぐに蒸すことで酸化酵素の働きを止め、緑色を保ったまま加工します。
この製法により、茶葉本来の清々しい香りと旨味、そして鮮やかな緑色が保たれるのです。
ちなみに、途中まで酵素の働きを利用するウーロン茶を半発酵茶、最後まで酵素の働きを利用する紅茶を発酵茶といいます。
主な日本茶の種類

煎茶:最も一般的な日本茶で、蒸した茶葉を揉みながら乾燥させて作ります。
玉露:新芽の出る前に茶園を覆いで遮光して栽培した最高級茶。
旨味成分のテアニンが豊富で、濃厚な味わいが特徴です。
抹茶:覆いをかけて栽培した茶葉を石臼で粉末状に挽いたもの。茶道で用いられる格式高い茶です。
ほうじ茶:煎茶や番茶を強火で炒ったもの。香ばしい香りとさっぱりした味わいが特徴です。
玄米茶:煎茶や番茶に炒った玄米を混ぜたもの。玄米の香ばしさが加わった親しみやすい味です。
煎茶の生産と製法について解説
日本で緑茶といえば煎茶をさすのが一般的。
その証拠に、日本で生産される緑茶のうち、最も多いのが煎茶です。
主な産地は、静岡県と鹿児島県。この2県で総生産量の80%以上を占めています。(令和4年度)
この記事では、日本茶を代表する煎茶の「生産・製法」を紹介します。
煎茶の製造時期 新茶・番茶

煎茶の産地では、4月中旬以降になると茶摘みが始まります。
そして、その年の最初に作られるお茶を「一番茶」(新茶)と呼びます。
一番茶は、冬に休眠している間、栄養を蓄えた新芽を使用して作るため、緑茶の中で最も良い品質です。
さらに、新芽を摘みとられたお茶の木は、温暖なうちは再び新芽を出します。
それを摘み取って作るお茶を二番茶、同様にその次に出た新芽から作るお茶を三番茶といいます。
二番茶以降は、徐々に品質が低下。三番茶以降に作られる煎茶は番茶として扱われます。
煎茶の製法
煎茶の製法は以下のとおりです。
①摘採(てきさい):茶葉を木から摘むこと。乗用型の機械で摘むこともあるが、高級茶は手摘みすることも。
②蒸熱(じょうねつ):蒸気の熱で生茶葉の酵素を働きをとめる(殺青・さっせい)
茶葉の鮮やかな緑色と、独特のさわやかな香りや旨味を閉じ込める
③粗揉(そじゅう):熱風を送り適度に揉みながら水分を低下させる
④揉捻(じゅうねん):熱を加えず、圧力をかけ、茎の水分を揉み出し、茶葉の水分を均一にする
⑤中揉(ちゅうじゅう):熱風を送り適度に揉む。茶葉を解きほぐしよれた形にする
⑥精揉(せいじゅう):加熱しながら揉み、茶葉をよって針状に整形
⑦乾燥:熱風を送りながら水分含量が5%になるまで乾燥させる
以上の工程で作られたお茶は「荒茶(あらちゃ)」といいます。
その後、さらに火入れ(水分含量3%まで乾燥)や茎や粉などを取り除く作業等を経て、合組(ブレンド)を行い店頭に並びます。
日本茶の成分

日本茶の主な成分は以下のとおりです。
・カテキン類:ポリフェノールの一種。茶葉に15%程度含まれる
・カフェイン:苦み成分、茶葉に2.3%程含まれる
・テアニン:甘みや旨味を持つアミノ酸
・その他:水溶性のビタミンB1,B2,C,葉酸 脂溶性ビタミンA・E・K、カルシウム等
つまり、緑茶を淹れた後の茶殻には、水に溶けない脂溶性ビタミンA・E・Kなどや食物繊維が残ったまま。
さらに、水溶性の成分も一部残っており、特にカテキン類は約半分が残っています。
栄養豊富な茶殻は、料理の素材として活用することができるのです。
日本茶の楽しみ方
日本茶の淹れ方のポイント

日本茶を淹れる際は、茶葉の量・湯量・湯温・浸出時間がポイントです。
使用する水は、軟水が向いています。
水道水の場合は、一度沸かしてから使いましょう。
また、お湯の温度を下げる場合は、湯冷ましを使うか、一度湯呑みにお湯を注いでから急須に移すといいですよ。
そうすることで、湯呑みがあたたまり、お湯の量が測れます。
複数の湯呑みに注ぐときは、廻し注ぎ(まわしつぎ)をし、すべてのお茶の濃さが均一になるようにします。
緑茶の標準的な淹れ方
以下を目安にお茶を淹れましょう。
煎茶:茶量6g・湯温70℃・湯量170ml・浸出時間120秒
ほうじ茶:茶量6g・熱湯・湯量650ml・浸出時間30秒
玉露:茶量10g・湯温50℃・湯量60ml・浸出時間150秒
*茶量・湯量は3人分、ほうじ茶のみ5人分
茶器の選び方のポイント

急須や茶器などもこだわって選びましょう。素材やサイズで味が変わりますよ。
素材:
・陶器製のものは、緑茶の成分を吸収するため、まろやかな味になります。
・磁器やガラス製のものは、緑茶の味がストレートに感じます。
サイズ:
・玉露や上等な煎茶など、濃厚な味のお茶には小ぶりのもの
・ほうじ茶や番茶などさっぱりとした味わいのものは大きめのものが向いています。
現代に生きる茶の精神

最後に、茶道で重視されているお茶の精神についてお伝えします。
茶道をしない方でも、一杯のお茶と向き合うことで気分が変わる効果があります。
ほっと一息つきたいとき、少し集中したいときなど、お茶でリフレッシュしてみませんか。
「一期一会」の心
茶道で重視される「一期一会」の精神は、現代の私たちにも大切な教えを与えてくれます。
二度と同じ機会は訪れないという認識のもと、その瞬間を大切にし、相手との出会いに感謝する心——これは茶を飲む時だけでなく、日常生活全般に通じる哲学です。
「和敬清寂」の美学
茶道の根本精神である「和敬清寂(わけいせいじゃく)」も、現代社会に生きる私たちが見つめ直すべき価値観です。
和やかで、相手を敬い、清らかで、静寂を愛する心——これらは物質的な豊かさとは異なる、精神的な充実を追求する日本人の美意識の根幹をなしています。
日本茶の未来への継承

日本茶業界は海外展開や新しい商品開発に積極的に取り組んでいます。
近年では、抹茶ラテやグリーンティーアイスなど、従来の枠を超えた商品が世界中で愛されています。
一方で、大西園のような伝統的な手もみ茶の技術も、その価値が再認識され、若い世代への継承が進められています。
日本茶は、千年以上の歴史を持ちながらも、常に時代とともに進化し続けてきました。
伝統を守りながらも新しい挑戦を続ける——この姿勢こそが、日本茶文化の不変の精神なのです。
一杯のお茶を飲むとき、そこには先人たちが築き上げた豊かな文化と、現代の職人たちの情熱が込められています。
私たちは単に喉の渇きを癒すだけでなく、この深い文化的背景とともに茶を味わうことで、より豊かな時間を過ごすことができるのです。
一杯の日本茶で心豊かなひとときを~作り手の思いと歴史も味わう

今回は、日本茶の種類や製法、お茶の誠心まで幅広く解説しました。
「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」という古くからの言葉が示すように、日本各地でそれぞれの特色を持ったお茶が作られてきました。
例えば、大西園の中島さんが狭山茶にかける情熱は、全国の茶産地で受け継がれている日本茶への愛情と誇りの象徴でもあるのです。
この千年を超える日本茶の物語は、今日も各地の茶園で新たな章が書き加えられ続けています。
一杯のお茶から始まる豊かな時間を、ぜひ多くの方に体験していただきたいと思います。

