三川内焼 窯元めぐり|歩いて巡る、歴史と手仕事の町

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三川内を歩く ― 窯元の町をめぐる産地散歩


長崎県佐世保市三川内町。
ここは約400年の歴史を持つ焼き物の里で、かつて平戸藩の御用窯として発展した三川内焼のふるさとです。
町のあちこちには登り窯の跡や陶板タイルが残り、歩くだけで焼き物の息づかいを感じることができます。

今回の散歩は、三川内山公園の駐車場を起点に、ゆっくりと窯元をめぐる旅です。
途中で立ち寄った、光雲窯(こううんがま)さんでいただいた散策マップを片手に、窯元めぐりをした様子を紹介します。

長崎への旅を予定している方やうつわ好きの方は、ぜひ参考にしてください。

はじめに:三川内焼(みかわちやき)とは?

三川内の散策レポートの前に、三川内焼について解説しますね。

  1. 美しい白磁(はくじ)
    三川内焼の原料となる「天草陶石」と「網代陶石」を調合することで、きめ細かく、少し青みがかった白さが生まれます。この清潔感のある白さが、絵付けの美しさを一層引き立てます。
  2. 繊細な「染付(そめつけ)」
    白い磁器の上に、呉須(ごす)という藍色の顔料で絵を描く技法を「染付」といいます。
    三川内焼の染付は、狩野派絵師の原画をルーツに持つともいわれ、まるで一枚の絵画のように緻密で、写実的な表現が特徴です。
    特に、器に遊ぶ子供たちを描いた「唐子(からこ)の絵付け」は、三川内焼の代名詞として知られています。
  3. 高度な伝統技法
    三川内焼には、職人の高い技術が光る様々な技法があります。
    • 透かし彫り:器の生地をくり抜いて、繊細な模様を表現する技法です。光が透けることで、幻想的な美しさが生まれます。
    • からくり:蓋をかぶせたり、別の器と組み合わせたりすることで、隠された部分が現れる仕掛けのある作品です。
    • 卵殻手(らんかくで):卵の殻のように非常に薄く、軽くて丈夫な磁器です。

三川内焼の歴史
三川内焼は、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に、大名の松浦鎮信が朝鮮から連れ帰った陶工が窯を開いたことに始まります。
その後、江戸時代には平戸藩の御用窯として、将軍家への献上品や海外への輸出用として、非常に高い品質の作品が作られるようになりました。

散歩の始まり ― 地図を片手に窯元と里山をめぐる


地図には16軒もの窯元が並び、地域全体が“窯の町”であることを実感させます。
小川沿いの道や坂道を歩くと、白壁や煙突が見え隠れし、焼き物の町独特の風情が漂います。

美術館や公民館も散策ルートにあり、地域全体で焼き物文化を支えていることが伝わってきます。

出会った三つの窯元を紹介

五光窯 ― 夫婦でつくる二つの表情

ご夫婦の作品を並べた展示



まず訪れたのは五光窯(ごこうがま)さん。

ご夫婦それぞれが異なる作風で作品を手掛けており、ひとつの窯元で多彩な表情を楽しめるのが魅力です。
旦那さんの落ち着いた作風と、奥様の柔らかく華やかな作風。
お二人の違いが響き合い、工房全体が温かな空気に包まれていました。

青と白の繊細な絵付けの器は、気品がありながら使いやすそうなものばかり。
1枚ずつそろえて、トータルコーディネートしたくなります。

公式HP:https://gokougama.net/

光雲窯 ― 遊び心あふれる筆致

店内には、クジラや恐竜の絵付け作品が並んでいます


次に立ち寄ったのは光雲窯さん。

現代の名工に選ばれた今村さんが手掛ける作品は、伝統的な唐子模様に加えてクジラや恐竜といったユニークな絵付けが魅力です。
濃いブルーと白のコントラストが美しい絵付けのうつわは、インテリアとして飾っておきたくなるほど。
すべて手描きをされており、その緻密さと遊び心に心が和みました。
突然の訪問でも快く迎えてくださり、気さくで温かみのある今村さんとの会話が印象に残りました。

光雲窯についてはこちら
https://www.mikawachiware.or.jp/information/kilns/koun_kiln/ (三川内焼総合サイト)

平戸松山窯 ― 伝統を描き続ける手

絵付け作業の様子

散歩の締めくくりは平戸松山窯さん。
店内のガラス越しに絵付けの様子を見学でき、唐子模様を一筆一筆描く姿はまさに職人の手業。
女将さんの細やかな気遣いも心地よく、伝統を受け継ぐ温かさを実感できる工房でした。

公式HP:https://www.hiradoshouzan.com

町全体に漂う焼き物文化を堪能・そのほかの窯元も紹介

公民館の壁にも陶板が。焼き物の町ならではの光景ですね。


三川内の魅力は窯元だけにとどまりません。
公民館や駐車場の案内板には三川内焼の陶板が使われ、日常の風景に焼き物が息づいています。

道沿いには洸祥窯さんや嘉祥窯さん、嘉泉窯さんなど全部で16の窯元さんがあり、歴史を感じさせる窯元が点在していました。
地域ぐるみで文化を大切にしていることが伝わり、町を歩くだけで「暮らしと焼き物が一体になっている」と実感できます。

以下に今回は訪れることができなかった窯元さん・ギャラリーを紹介しますね!

ギャラリーさるのあしあと https://www.instagram.com/sarunoashiato/


啓祥窯(けいしょうがま) https://www.mikawachiware.or.jp/information/kilns/keisho_kiln/

平戸洸祥団右ヱ門窯(ひらどこうしょうだんうえもんがま)https://www.kohsyo.co.jp/

嘉泉窯(かせんがま) http://kasengama.com/

嘉久正窯(かくしょうがま) https://kakusho-kiln.jp/

歩いて感じる三川内~産地をめぐって三川内焼の魅力を知る

自然豊かな三川内の風景

三川内を歩くと、400年の歴史を背負った焼き物の町が今も息づいていることを感じます。
窯元ごとに異なる個性がありながら、共通しているのは「暮らしを彩りたい」という思い。

今回出会った五光窯さん、光雲窯さん、平戸松山窯さん。
それぞれの作品と人柄に触れることで、三川内焼の奥深さを知ることができました。

散歩を終えて振り返ると、町全体がひとつの大きな工房のように思えてきます。
次に訪れるときは、また別の窯元に立ち寄り、さらに深い物語に出会いたいと思います。

三川内について
長崎県佐世保市にある三川内。
北西にそびえる隠居岳(かくしだく)の麓にあり、小森川が流れる田園地帯が広がっています。
町には、窯元や登り窯の跡が点在し、焼き物を運ぶために使われたとされる「馬車道」など、焼き物の歴史を伝える名残を見ることができます。
また、公民館の案内板など日常の風景にも三川内焼の陶板が使われており、人々の暮らしと焼き物が一体となっていることが伝わってきます。

■窯元が集まる「三川内皿山」
三川内は、陶磁器の生産地を指す「皿山(さらやま)」の一つとして栄え、現在でも、多くの窯元が軒を連ねています。
窯元ごとに異なる作風や、職人さんの温かい人柄に触れることができるのが、この町の大きな魅力です。

交通アクセス
佐世保市街地から車で約30分、公共交通機関ではJR三河内駅が最寄りです。
西九州自動車道を使えば、佐世保三川内ICからもアクセスできます。

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