【島根・紫翠窯】陶芸家・山本達長が切り拓く、伝統と今風のハイブリッドなものづくりを紹介

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島根・紫翠窯の陶芸家、山本達長:伝統にとらわれず、可能性を拓く

引用画像:公式Instagram

島根県出雲市に窯を構える紫翠窯(しすいがま)の陶芸家、山本達長(やまもと たつなが)氏。

彼の生み出す器は、桃山時代から続く日本の伝統的なやきもの、織部焼(おりべやき)を土台にしながらも、独自の視点と感性で新たな魅力を吹き込んでいます。

深みのある鮮やかなグリーンと、特徴ある形や文様が印象的な彼の作品は、「伝統にとらわれ過ぎず、新しいものを否定しないで可能性をさぐっている。伝統と今風のハイブリッド」という彼の言葉を体現しています。

この記事では、山本氏のこれまでの歩とともに、作品作りへのこだわりや大切にしていることなどをお伝えします。
紫翠窯の作品に興味のある方はもちろん、織部焼やものづくりに関心のある方もぜひお読み下さい。

運命的な出会いと修業の日々

山本氏は、子どもの頃から自宅に祖父が建てた茶室があり、さまざまな美術品に囲まれて育ちました。
美術品への興味はあったものの、当初は陶芸家を目指していたわけではなかったとのこと。

転機が訪れたのは大学卒業後、祖父のすすめでした。
そこで、山本氏は、岐阜県の可児市重要無形文化財「織部」技術保持者であった故・瀧口喜兵爾(たきぐち きへいじ)氏に弟子入り。
4年間の修業期間は、土練り、釉薬の準備、片付けなど、師の仕事が滞らないように必死に尽くす日々でした。

特筆すべきは、師から直接的な制作方法を細かく教わることは少なかったにも関わらず、師の制作中の姿勢や所作を「なんとなく毎日見る」中で記憶に刻みつけていたことです。

修業の終わりが近づき、ひと窯分の「卒業」作品を制作することになった際、その記憶をたどりながら見事に作品を完成。
この経験は、彼の作陶の根幹に、師から受け継いだ本質的なクオリティーへのこだわりを深く植え付けました。

伝統を土台に、視野を広げた作陶

製作風景:公式Instagramより

2007年に帰郷した山本氏は、祖父の茶室「紫翠庵」の隣に窯を築き、「紫翠窯」と名付け、作陶を開始しました。
以来17年、今では全国に常連客を持つ人気作家となりました。

築窯当初は作品がなかなか売れず、諦めかけたこともあったといいます。
しかし、修業時代に師から「とにかく続けなさい」と教えられた言葉を胸に、ひたすら作陶を続けてきました。

師である瀧口氏は、桃山時代の技法を忠実に再現されており、山本氏はその「本物のクオリティー」を間近で見てきました。
そのため、「雑な仕事はしたくない」という思いは今も変わらず、制作に真摯に向き合っています。

しかし、今となっては、その真面目さが行き過ぎていた時期もあったと振り返ります。
当初は器の厚みをどこも均等に、きっちりと仕上げないと気が済まなかったといいます。

ただ、経験を重ねるうちに、時間をかければ良いのではなく、自然な流れを生かすことの重要性に気づきました。
視野が広がり、器を部分ではなく一つの器として全体を見るようになったことで、「味があるものになったのかも」と謙虚に語ります。

アートのようなぐい呑み・手になじみます:テーブルライフオンラインストア


器の表面には、ごつごつとしたテクスチャーが見られることもありますが、それが手触りの良さや、滑りにくさという機能的な魅力にも繋がっています。

織部焼の可能性を広げる「ハイブリッド」な挑戦

織部焼は、主に日本料理店などで使われることが多い伝統的な器ですが、山本氏はその枠にとどまろうとしません。

彼の織部焼は、単なる伝統の再現ではありません。
鮮やかなグリーンを特徴としながらも、オブジェのようなユニークな形のお碗や、シンプルにお花を生けても映えるようなモダンな器など、現代の暮らしに溶け込む作品を多数手がけています。

ユニークなモチーフの作品もあります!:テーブルライフオンラインストア

伝統的な技を生かしながら、一般的な器も手掛けたい」という山本氏の言葉が示すように、彼の作陶は今もなお進化の途上にあります。
他の窯元とも情報交換を行い、柔軟な姿勢でお客さんに求められる器を作り続けたいという彼の思いは、伝統工芸が現代において生き残り、発展していくための「ハイブリッド」な道を示しています。

師から受け継いだ「クオリティー」へのこだわりと、伝統にとらわれない「可能性」を探る探究心。
この二つの軸を持つ山本達長氏の織部焼は、日本のやきものの奥深さと、現代的な美しさを同時に感じさせてくれるでしょう。

皆さんも、従来の織部焼のイメージとは一線を画す、紫翠窯のうつわをぜひ使ってみて下さい。
味のある深い緑は、どんな食材も美しく見せてくれ、食卓になじみつつも存在感があります。

いつも同じような器を使って、テーブルが変わり映えしない…
そう感じたら、紫翠窯の小皿や湯呑みなどを取り入れることで、食卓にメリハリが出ます。
織部焼は茶道で使われるなど、ハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、日常使いしてみるといいですよ。

紫翠窯・山本達長さんについて
2003年 岐阜県可児市 瀧口喜兵爾 氏に弟子入り
2007年 出雲市にて築窯 紫翠窯と命名
西日本陶磁器フェスタなど、各地の様々なイベントに出展し、精力的に活動。
公式Instagram:https://www.instagram.com/tatsunaga_yamamoto/


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