狭山茶産地めぐり:職人の情熱に触れる、茶畑巡りの旅へ

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狭山茶めぐり | 職人たちの情熱が紡ぐ、一杯の物語を巡る旅

「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」。
この狭山茶摘み歌に歌われるように、埼玉県入間市は「日本三大茶」の一つ、狭山茶の故郷です。

都心からわずか一時間ほどの距離にありながら、日本の伝統的な茶文化が色濃く息づくこの地には、一杯のお茶に人生を捧げる職人たちがいます。

今回は、彼らが守り育む奥深いお茶の世界を巡る、特別な散歩へとご案内します。

茶工房 比留間園|「極茶人」が守る、究極の手もみ茶の真髄

引用画像:NIHONMONO

まず最初に訪れるのは、創業40年余りという、狭山茶の歴史の中では比較的新しいながらも、その名を全国に轟かせる「茶工房 比留間園」です。
園主の比留間嘉章さんは、手もみ茶の技術を極め、農林水産大臣賞を7度も受賞した、まさに「極茶人」と称される人物です。

比留間さんが手掛ける「手もみ」は、単なる乾燥工程ではありません。
熟練した茶師の手で、茶葉を揉みながら乾燥させる、時間と手間を惜しみなく注ぐ伝統技法です。
その工程はまるで、茶葉に命を吹き込む芸術のよう。焙炉(ほいろ)の上で、蒸された茶葉が湯気をあげながら比留間さんの手によって舞い、徐々に水分を失っていく姿は、息をのむほどに美しく、神秘的です。

引用画像:NIHONMONO

手もみ茶には、収穫の二週間前に被覆した玉露の最上級の一番茶、それも手摘みした「一芯二葉」のみが使われます。
比留間さんは、その厳選された茶葉を、手の感触、色、匂い、重さといった五感を研ぎ澄ませて丁寧に揉み上げていきます。この感覚は、長年の修練なくしては身につかないものであり、機械では決して生み出せない、比類なき味わいの源なのです。

比留間さんが編み出した、極上手もみ茶のための新しい淹茶法「八重奏(やえのかなで)」を試せば、その価値は一瞬で理解できます。
たった2〜3本の茶葉に、ほんの数滴の湯をかけるだけ。

それを口に含むと、信じられないほどの濃密な味わいと、花や果実を思わせる華やかな香りが口いっぱいに広がり、心に深い感動をもたらしてくれます。
高価に感じられるかもしれませんが、少量から販売されており、誰もがこの究極の一杯を体験できるのも魅力の一つです。

■公式HP:http://gokuchanin.com/

大西園|「永世茶聖」が創り出す、伝統と革新の狭山茶

引用画像:公式HP

次に向かうのは、江戸時代から約250年の歴史を持つ「大西園」です。
ここでは、伝統を守りながらも、常に新しい挑戦を続ける14代目・中島毅さんの物語に出会えます。

中島さんは、全国手もみ茶品評会で8度も日本一に輝き、「永世茶聖」という日本初の称号を授与された、日本の緑茶界における若きホープです。

彼が創り出す手もみ茶は、なんと1kgあたり112万円という驚くべき価格がつくほど。
しかし、その根底には「他と同じものを作っても面白くない。常に誰にも真似できないお茶を作りたい」という、飽くなき探求心があります。

この信念から、大西園では数々の革新的なお茶が生まれています。
例えば、新茶の時期に数量限定で販売されるオリジナル「天日干し 天照香茶」。古来の製法である「天日干し」を取り入れることで、お茶本来の香りと味わいを最大限に引き出しています。
また、埼玉県の品種を用いた和紅茶の製造にも力を注ぎ、狭山茶の新たな可能性を広げています。

中島さんは、「お茶を通じて多くの人々と繋がり、この文化を次世代に伝えていきたい」と語ります。
彼にとって、お茶は単なる商品ではなく、お客様との温かい「縁」を紡ぐ大切な存在なのです。
伝統を守りながらも、常に新たな挑戦を続ける大西園の姿勢は、私たちに「変化を恐れずに進むことの大切さ」を教えてくれます。

■公式HP:https://oonishien.jp/

宮野園|お茶が繋ぐ、心のゆとりとコミュニケーションの場所

引用画像:公式Instagram

最後に訪れるのは、一世紀以上にわたり「味の狭山茶」を作り続けてきた「宮野園」です。
ここでは、お茶を単なる飲み物ではなく、人と人との繋がりを育む「コミュニケーションツール」として捉える温かい哲学に触れることができます。

宮野園が大切にするのは、「誰と一緒に楽しむか」という価値観です。
どんなに高価なお茶も、大切な人と分かち合うことで、その味わいは何倍にも深まります。
忙しい現代だからこそ、お茶を淹れ、お茶を楽しみながら会話を楽しむ時間が、私たちの心にゆとりと温かさをもたらしてくれるのです。

ここでは、狭山茶の特徴である深い味わいを引き出す伝統の「狭山火入れ」を施したお茶を味わえるだけでなく、自らの手でお茶の魅力を体験できる豊富なメニューが用意されています。

例えば、「茶摘み体験」では、赤い前掛けの衣装を借りて、広大な茶畑で茶葉を摘みます。
その場で揚げた「お茶の葉の天ぷら」も味わえ、普段何気なく飲んでいるお茶がどのように育まれているのかを五感で感じられる貴重な時間です。

引用画像:公式Instagram


また、「お抹茶体験」では、茶臼で抹茶をひくところから始まり、抹茶アートにも挑戦できます。
日本の伝統文化である茶道を、誰もが楽しく気軽に体験できるのが魅力です。

■公式HP:https://miyanoen.com/

狭山茶を巡る旅で日本茶と日本文化の奥深さを知ろう

三つの個性豊かな茶園を巡るこの旅は、一杯のお茶に込められた職人たちの情熱と、日本の茶文化の奥深さを再発見する貴重な体験となるでしょう。

手間を惜しまず、茶葉と真摯に向き合い、最高の味を追求する職人たち。そして、その一杯を通して、人々の心と心をつなぎ、日本の文化を次世代へと繋いでいく彼らの姿は、私たちに多くの感動を与えてくれます。

ぜひ次の週末は、狭山茶を求めてお出かけしてみませんか?
きっと、あなたの日常を豊かにする、特別な一杯との出会いが待っているはずです。

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