優しい線の輪郭と、人との輪を紡ぐ器:陶hitonowa・伊藤瞳さんを紹介します!
山梨県忍野村に工房を構える陶芸家、伊藤瞳さん。
彼女が生み出す器は、シンプルな線で描かれたモチーフが特徴です。
静かで穏やかな時間が流れる山梨の自然を写し取ったような作品たちは、使う人の日常にそっと溶け込み、心地よい彩りを与えてくれます。
この記事では、伊藤さんにお話を伺い、陶芸家になった経緯や創作活動で意識していることなどをお伝えします。
CM業界から陶芸家へ~自分だけの手で完結するものづくりを仕事に

伊藤さんは、元々CM制作に興味があり、大阪芸術大学の放送学科で学びました。
卒業後は東京の映像制作会社に就職し、マスコミ業界の厳しい現実に直面。
この経験が、CM業界を離れ、陶芸家になることを決意した大きなきっかけとなり、
自分の手だけで完結する「ものづくり」をしたいと考えるようになったそうです。
陶芸家への道は、未経験ながら栃木県の益子焼の窯元に弟子入りすることから始まります。
そこで約4年間、ろくろや土の扱い方、窯焚きなどを徹底的に学びました。
その後、神奈川県の陶芸家、伊集院マリコ氏のもとへ。
伊集院氏は主に土鍋を専門としており、伊藤さんはそこで3~4年ほど修行を積みました。
そして、ご主人の実家がある山梨県忍野村に工房として使える小屋を見つけ、そこを拠点に独立。
この決断の背景には、伊藤さんの「やりたいことをやってみる」という強い好奇心があります。
サップやスキーなど、これまで経験したことのないことにも積極的に挑戦する彼女の生き方は、陶芸家としての探求心にもつながっているのかもしれません。
益子の土と「線彫り」が織りなす物語

伊藤さんの作陶の原点は、栃木県益子町での4年間の修行にあります。
今も原点ともいえる益子の土を使い、一つひとつ丁寧に器を作り続けています。
作品の大きな特徴は、「線彫り」という技法。
ろくろで成形した器に、溝を彫って弁柄(べんがら)色の鉄を流し込むことで、繊細な模様がくっきりと浮かび上がります。
この独自の技法によって、花や草木といったモチーフが、まるで物語を語るかのように器の表面に表現されています。
自然の息吹が宿る器:山梨の風景を写しとる

伊藤さんの作品には、山梨の豊かな自然が感じられます。
器に描かれるモチーフは、工房から見える富士山や、四季折々の花や植物、風になびく草など、身近な風景からインスピレーションを得ています。
特に、工房の周りの木々が秋に向けてグラデーションのように色を変えていく様子は、創作意欲を強く刺激しているそうです。
こうした自然の息吹を器に落とし込むことで、使う人の食卓に安らぎと彩りをもたらすことを大切にしています。
作品の独自性は、シンプルながらも洗練された美しさにあります。
弁柄色が土の温かみと相まって素朴な風合いを生み出し、料理が映えるよう、色使いはあえてシンプルにすることを心がけています。
また、一部の作品に見られる紫色は、釉薬を弾かせることで土と鉄の色がそのまま出るようにした、自然な色合いです。
使う人に寄り添う「人の輪」

工房の名前「陶hitonowa」は、「人の輪」から名付けられました。
器を通じて人と人がつながり、温かい輪が広がっていく。そんな想いが作品に込められています。
【使いやすさへのこだわり】
陶hitonowaの器は、見た目の美しさだけでなく、使いやすさも追求されています。
益子焼の「重い」というイメージを払拭するため、カップの側面を削って薄くする面取りという技法を使い、軽くて使いやすい器を追求しています。
また、電子レンジや食洗機にも対応できるようにするなど、使い手の暮らしに自然となじむことを大切にしています。
【お客様の声が新たな創作の源に】
お客さんから「この器を毎日使っていて、生活にホッとする時間が生まれた」という声を聞いた時が、何より嬉しい瞬間だと伊藤さんは語ります。
お客様からの意見や要望は、新しいアイデアの源になり、作家としての成長を支えています。
【作り手としての思い】
伊藤さんの器は、シンプルなデザインでありながらも、手に取ると温かみを感じます。
それは、土と向き合い、手作業でていねいに作られた証です。
作品は、ギャラリーに並ぶだけでなく、毎日の食卓で使われ、暮らしの中で育っていく存在であってほしいという伊藤さんの想いが伝わってきます。
【これからの挑戦】
今後は、これまで師事した伊集院氏に教わった土鍋やミルクパンなど、調理器具の制作にも挑戦したいという気持ちがあるそうです。伊藤さんの新たな試みが楽しみですね!
日常に寄り添い、心を豊かにする器で毎日を楽しく

陶hitonowa・伊藤瞳さんの作品は、卓越した技術と、自然や人々への温かい眼差しから生まれています。
シンプルな線で描かれたモチーフは、日々の暮らしにささやかな感動と、特別な彩りをもたらしてくれます。
器を通じて人との輪を広げ、使う人の日常に寄り添うこと。
これこそが、伊藤さんが目指すものづくりの形です。
彼女の作品は、手仕事のぬくもりと、作り手の豊かな感性が詰まった、まさに「人と人をつなぐ」存在なのです。
絵画のように美しいうつわはどれも1点物。
皆さんも、見て楽しい、飾っておきたくなる実用的な器を使ってみませんか。
いつもの食事風景が、楽しく変化することが実感できるのではないでしょうか。
陶hitonowa・伊藤瞳さんについて
【プロフィール】
1981年 静岡県生まれ
2004年 大阪芸術大学放送学科広告コース卒業
2005年 陶芸を学ぶことを決意する
栃木県益子町・横山陶芸入社
2009年 神奈川県平塚市・陶芸家伊集院真理子氏に師事
2014年 山梨県忍野村にて築窯
ブログ:https://hitomito.exblog.jp/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hitonowa_utsuwa/

