「工芸の街」として知られる長野県松本市。
この街で毎年5月の最終土日に開催される「クラフトフェアまつもと」は、全国から選りすぐりの作家が集結する、まさにクラフトファンにとっての聖地巡礼ともいえる一大イベントです。
今回は、うつわ好きのスタッフが1泊2日で訪れ、松本のものづくりを堪能した「120%の楽しみ方」を徹底解説します。

「クラフトフェアまつもと」とは?――なぜ、この場所なのか

100年以上続く「松本民芸家具」の歴史や、街のあちこちに流れる清らかな湧水。松本には古くから「暮らしを丁寧に営む」土壌があります。
そのような場所で1985年に始まったのが「クラフトフェアまつもと」です。
現在は「あがたの森公園」を舞台に、厳しい審査を通過した約260組(2025年実績)の作家が出展している、大規模なクラフトフェアです。期間中は特急の増便もあり、その人気ぶりがうかがえます。
陶磁、ガラス、木工、染織、金工など、そのジャンルは多岐にわたりますが、共通しているのは「質の高さ」と「作家の哲学」が感じられること。
単なる即売会ではなく、作り手と使い手が出会い、対話する。そんな「ものづくりの原点」を感じられるイベントです。
賢く回るための「3つの攻略ポイント」
会場となる「あがたの森公園」は広く、当日は大変な賑わいを見せます。初めて行く方が迷わず楽しむためのポイントをまとめました。
① アクセスは「徒歩」がおすすめ!

松本駅から会場までは徒歩約20分。バスもありますが、イベント時は非常に混雑し、一本見送ることも珍しくありません。
また、会場周辺は渋滞するため、タクシーもあまりおすすめできません。
駅からあがたの森へと続く道(通称:あがたの森通り)は、新緑が美しく、途中の商店街にもクラフト関連の展示が溢れています。街の空気を感じながら、のんびりと歩くのがいいと思います。
私は、駅前のホテルから徒歩で行きました。
住宅街にある小さな神社などに立ち寄りながら、渋滞に関係なくたどり着けました!
② 出展場所は「当日の朝」チェック

「お目当ての作家さんのブースがどこか分からない!」……これはクラフトフェアまつもとならではのこと。
実は出展ブースの配置図は、当日の朝まで公開されません。
会場に到着したら、まずは総合受付付近の掲示板を確認しましょう。
そこで配置図をスマホで撮影しておくのが、スムーズな移動のコツ。公園をぐるりと一周すれば全ブースを回れますが、人気の作家さんは午前中で品薄になることもあるため、優先順位を決めて動くのが賢明です。
③ 「ランチ難民」を回避する

会場内にはキッチンカーや飲食ブースも出展しますが、どこも長蛇の列になります。
・地元のパン屋さん「耕紡工房」などのテイクアウトを購入し、芝生でピクニック気分を楽しむ。
・あえて少し時間をずらし、市内の古民家カフェ(例:栞日など)へ足を伸ばす。
このように、食事のプランを事前にイメージしておくと、一日の満足度がぐっと上がりますよ。
スタッフおすすめの作品を紹介
今回のレポートでも触れている通り、会場には個性豊かな手仕事があふれています。
スタッフが気になった、おすすめの作家さんのブースを一部紹介しますね。
陶磁器
浜中明子

笠間で作陶する浜中明子さん。笠間の陶炎祭(ひまつり)で知った作家さんで、今回は買い足しのために立ち寄りました。
水彩画のような色合いと、ブルーの絵の具を流したような唯一無二の模様が魅力です。
いつも、料理を盛り付けた写真を並べているので、使用例がイメージできるのがいいですよ。
陶 芦澤

スリップウェアによる多様な作品が並ぶ芦澤さんのブース。さまざまなタイプの水玉模様のうつわは、見ているだけで元気になります。テーブルのアクセントに欲しくなりますね。
沼田 佳奈子 靑と羊

さまざまなテイストのうつわを作っている沼田 佳奈子さん。活動名が「靑と羊」とあるように、独特な青の作品が多いです。
陰影のある美しいターコイズブルーのうつわは、形のバリエーションが豊富、1枚ずつ集めたくなりますね。
フルカワゲンゴ

さまざまなイベントで出展されているフルカワゲンゴさん。白、黒、シルバーなどモノトーンが基調でやや無機質にみえるうつわはどれもスタイリッシュ。何を盛り付けても様に様になるので、ふだん使いからおもてなしまで活躍しますよ。
片瀬有美子

安曇野で活動する片瀬さん。19世紀のイギリスの陶芸技法である「モカウェア」を応用した独自の作品を作られています。
珊瑚や葉っぱなど自然をモチーフにしたかのような、独特の模様と色合いのうつわは、不思議な雰囲気があり、思わず立ち止まってしまいました。
ガラス
伊藤周作

山梨県笛吹市で活動している伊藤さん。レースのような繊細な模様が魅力です。
よく見るとハートが縦に連なっているデザインや口縁が赤になっているグラスなど、高いデザイン性に惹かれます。
毎日の食事やコーヒータイムが楽しみになりそうですね!
グラスキャリコ

神奈川県小田原市に工房「グラスキャリコ」を構える岩沢達さん。空や海など自然の中にある表情を吹きガラスで表現した作品は、1つとして同じ仕上がりがないのが素敵です。
自然光の中で見る、さまざまなブルーやグリーンのグラスは手になじみが良く、使いやすいのもいいなと思いました。
木工
MWC.WORKSHOP

木製のカップに金属の持ち手を組み合わせた、ナチュラルかつスタイリッシュなマグカップやドリッパーが気になりました。表面に手彫りによるレリーフがあることで、手仕事のぬくもりを感じます。
木目の美しさが映える独創的なうつわは、ほかではあまり見られません。おうちでカフェ気分が味わえそうです。

私は、うつわ関連のブースに注目しましたが、古本や布製品、アクセサリーなどを扱うショップもありましたよ。
街全体がギャラリーに。「工芸の五月」を巡る
クラフトフェア当日だけでなく、5月の松本は市内全域で「工芸の五月」というイベントが開催されています。
フェアの会場を一歩出た後も、お楽しみは続いています!
中町通り
蔵造りの美しい街並みが続く「中町通り」は、まさにうつわ好きのパラダイスです。
伝統ある民藝や骨董のうつわのほか、現代の作家物まで幅広い作風のうつわに出会うことができます。

ちきりや工芸店:松本民藝館の創設者・丸山太郎氏ゆかりのお店。日本各地、そして世界の民藝品が並び、特に窓際に並ぶ琉球ガラスや吹きガラスの光景は必見です。

松本民芸家具・中央民芸ショールーム:重厚な家具と共に、今の暮らしに合うクラフトの企画展が頻繁に行われています。


鳥乃子(とりのこ):漆器や木工を中心に、洗練された「ハレの日」にも使える道具が揃います。


少し足を伸ばして(松本駅からバスで15分ほど)、住宅街にひっそりとたたずむ「松本民藝館」へ。
ここでは、名もなき職人たちが作った「用の美」を湛える道具たちが、整然と展示されています。説明書きが最小限に抑えられているのは、「頭で考えず、自分の目で見て感じてほしい」という意図が込められているそう。
クラフトフェア期間中は、庭園内でイベントを開催していることもあります。
自然豊かな空間で物選びをするのは特別で贅沢なひとときですね。
旅の締めくくりは、街歩きを楽しんで松本駅へ

クラフトフェアの後は、松本市美術館で草間彌生さんのオブジェを見学、工芸の五月に参加している雑貨店などをめぐり、松本駅方面へ向かいました。

かなり歩いたので、休憩を兼ねて以前から気になっていたブックカフェ「栞日(しおりび)」へ。
古い商店を改装した店内は、1階がカフェと雑貨、2階がブックカフェになっており、選りすぐりの本を片手においしいコーヒーを味わうことができました。
付近には、個性あふれるお店が点在し、歩いているだけで楽しく、イベントがない日でも再訪したいと思いました。
クラフトフェアまつもとでまつもとの魅力を再認識できました!
松本クラフトフェアは、「手作りのものを買う」だけのイベントではありません。
作り手のこだわりや思いに触れ、歴史ある街を歩き、自分にとっての「心地よい暮らし」を見つめ直すことができる、素敵な催しです。
5月の爽やかな風に吹かれながら、世界に一つだけの宝物を探しに、松本へ出かけてみませんか。
そこには、大量生産・大量消費では味わえない、温かくて手触りのある時間が待っています。
また、松本民藝館や松本城など歴史ある名所を巡ることで、松本の魅力を深掘りできますよ。
【イベント概要】
■クラフトフェアまつもと:毎年5月最終土日
公式HP:https://craftsfair.matsumoto-crafts.com/
開催:2026年5月30日(土)・31日(日) 10:00~17:00 *最終日は16時まで
場所:あがたの森公園(松本市県3丁目2102 番15)
アクセス:松本駅から徒歩約20分
■工芸の五月
公式HP :https://matsumoto-crafts-month.com/
開催:2026年4月29日(水祝)~5月31日(日)
場所:松本市内各所・ギャラリー等

